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カトゥム――クメール族の伝統的な郷土菓子
20/04/2026 08:00
[VOVWORLD] - 素朴な材料から生まれる、クメール族の知恵と心が詰まった一品、カトゥム。アンザン省の豊かな食文化を今に伝える、大切な宝物です。
カトゥム――クメール族の伝統的な郷土菓子
みなさん、ベトナム南部のアンザン省に、クメール族に古くから伝わる伝統的なお菓子があります。その名は「カトゥム」。今日はこの素朴で魅力的な郷土菓子についてお伝えします。 vov5_smdt-anh_2_12.jpg カトゥム作りは職人の技が光る。 「カトゥム」とは、クメール語で「ザクロ」または「周りをしっかり包む」という意味です。その名の通り、カトゥムはザクロに似た愛らしい形をしています。もちもちとした食感と豊かな香り、そして深みのある味わいが特徴で、一度食べたら忘れられない、クメール族ならではの味です。 材料はシンプルです。もち米、ヤシの実、白いんげん豆、ピーナッツ、そして砂糖と塩。風味豊かに仕上げるため、豆とピーナッツはあらかじめ煮ておき、砂糖と塩を加えてよく混ぜ合わせます。ヤシの実は機械ではなく手でおろすことで、繊維が細く、食感がよくなります。さらにココナッツミルクをもち米に混ぜ込むと、一層まろやかな味わいになるそうです。 アンザン省オーラム村に住むニャン・ガインさんは、次のように話してくれました。 (テープ) 「ヤシの実ともち米、豆の香りが合わさって、とてもおいしいです。ココナッツミルクが良いものだと、お菓子もおいしくなります。季節を問わず、一年中作れるお菓子です。」 smdt-anh_3_22.jpg 最も難しいシュガーパームの葉で編む皮 このお菓子づくりで特に難しいのが、外皮を作る工程です。砂糖が採れるヤシの木「シュガーパーム」の若葉を丁寧に編んで、ザクロのような形に仕上げます。外皮はどこにも隙間があってはなりません。つなぎ目が少しでも開いていると、茹でる際に水が入り込み、味が薄くなってしまうからです。この葉で茹でることで、シュガーパーム特有の香りがお菓子に移り、もちもちとした食感も保たれます。 地元の職人、ニャン・フオンさんは次のように語ります。 (テープ) 「皮を編むのには時間がかかりますが、材料を入れるのはすぐできます。お湯を沸騰させてからお菓子を入れ、約50分茹でれば完成です。カトゥムを食べると、家族の豊かさと幸せをもたらすと言われています。」 食べ方もユニークです。葉のつなぎ目を自分で見つけ、外皮をゆっくり開けるところから始まります。口に入れてゆっくり噛むと、もち米のもちもちした香りに、ヤシの実のコク、豆の甘み、ピーナッツの風味が重なり合って、なんとも言えない豊かな味わいが広がります。 smdt-anh_4_4.jpg 美しいカトゥムは、緻密な編み目で中身が見えない。 カトゥムはクメール族の暮らしと祭事に深く根ざしたお菓子です。4月の正月祭「チョール・チョナム・トメイ」、旧暦7月の先祖供養の祭「セネ・ドルタ」、そして旧暦9月から10月にかけての月の神への感謝祭「オクオムボック」など、大切な行事には欠かせない存在です。また、クメール族のもてなしの心を表すお菓子としても知られ、友人や観光客への接待にもよく振る舞われます。 見た目もかわいらしく、値段もお手頃です。1個あたり6,000ドン、日本円でおよそ35円ほど。売れ行きの良い日には1,000個以上売れることもあり、ハノイやカントーといった遠方からも注文が入るといいます。 しかし現在、アンザン省でカトゥムを作る家庭は少なくなっています。この伝統を守り、次の世代に伝えるため、オーラム村の女性連合会は、職人のニャン・フオンさんが指導する製造組合を立ち上げました。オーラム村の女性連合会のニャン・サ・ラム会長は次のように語りました。 (テープ) 「現在8人のメンバーが技術を学びながら、ともにお菓子を作り続けています。村は資金融資の支援も行っており、国家プログラム「(OCOP)一村一品」への認定申請も進めています。」 smdt-anh_5_2.jpg 茹で上がると葉が黄色くなり、自然な香りを放つカトゥム アンザン省を訪れた観光客にも人気が高く、お土産として家族や友人へ買い求める人も増えています。そして今、このカトゥムは「ベトナムで最も手の込んだシュガーパームの葉で包んだ菓子」として、ベトナム記録への申請が提案されています。 素朴な材料から生まれる、クメール族の知恵と心が詰まった一品、カトゥム。アンザン省の豊かな食文化を今に伝える、大切な宝物です。  
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