技術を受け取っただけでは、その技術を自分のものにしたとは言えません。研究の成果を試し、企業が受け入れ、改良して、市場に出す。そこまで進んで、はじめて本当の力になります。
ベトナムは今、科学技術の飛躍的な発展をめざす、党政治局の決議第57号を進めています。国際協力にも、より高い水準を求めています。新しい技術に触れるだけでなく、研究し、使いこなす力を、国内で育てることが大きな目標です。
覚書に調印(2025年11月)。
きょうは、日本と韓国との協力の例から、技術を本当にベトナムの力にするには何が必要かを考えます。
まず、北部の港湾都市ハイフォンです。ハイフォンでは、韓国政府直属の韓国科学技術研究院、略して「KIST」と協力して、「KIST・ハイフォン技術センター」づくりを進めています。科学者と企業を結びつけ、研究から試験、技術の移転までを一緒に行う場所です。
KISTのキム・ジュソン博士は、これを一方通行の技術移転にしてはいけないと話します。
(韓国語の録音)
「このセンターは、韓国の技術をハイフォンに一方的に移す場所ではなく、共同の協力基盤になることを期待しています。両国の研究者と企業が、ハイフォンのニーズに基づいて、技術を一緒に開発し、試験し、商業化していく場です。研究から実用へ、そして市場へ、ハイフォンから世界へ。一緒に道をつくっていきます。」
ポイントは、ベトナム側のニーズが出発点になっていることです。技術が長く役に立つのは、現実の課題を解決できて、受け入れる機関があり、試験から商品化まで企業が関わるときだからです。
このためハイフォンでは、工業や港、物流の拠点という地域の特色に合った分野に、協力を絞っています。バイオ技術、新しい素材、循環型の経済、環境にやさしい技術、スマート農業、デジタル化などです。
ホアン・ミン・クオン副委員長。
ハイフォン市人民委員会のホアン・ミン・クオン副委員長は、さらに一歩進めて、中核となる技術での協力を求めました。
(録音)
「市は、人工知能、半導体、ビッグデータ、バイオ、スマート物流、海洋技術などで、実質的で長続きする協力を築きたいと考えています。海外のパートナーの皆さんには、中核技術を移すための道筋を、ハイフォンとともに、より現実的につくっていただきたい。市は、世界の知識がハイフォンで花開くよう、安全な環境を整えます。」
ただ、技術を受け入れる力は、一つの地方や一つの研究機関だけでは育ちません。大学、研究機関、企業、行政が、つながる仕組みが必要です。
日本も、この方向で協力を進めています。JICA国際協力機構ベトナム事務所の小林洋輔所長は、ハノイ郊外のホアラック・ハイテクパークを例に挙げました。
(日本語の録音)
「そうしたことを実質的な成果につなげるためには、やはり産官学の連携が不可欠だというふうに考えております。そうした観点で一つ着目しておりますのが、ホアラックハイテクパークでございます。ホアラックハイテクパークにおきましては、もともと日本がその基礎インフラを整備したんですけれども、そこにさらに日本の支援において宇宙センターができております。さらに、日本政府とUNDPの協力のもとで、ホアラックハイテクパークにあるNICの中に、インキュベーションセンター、インキュベーションスペースが今後できあがることになっております。また、日越大学の新しいキャンパスも、一部ホアラックハイテクパーク内に設置される予定になっております。そうした物理的な近接性の中で、こうしたそれぞれの取り組みが相乗効果を発揮し、産官学連携、特に私ども日本の開発機関でございますので、日本企業の参画の下での産官学連携がしっかり進むように、今後取り組んでまいりたいというふうに考えております」
こうした仕組みのなかで、人材は、技術を吸収できるかどうかを左右します。ベトナム技術応用・教育開発研究所のハー・ゴック・アイン所長は、教育の協力では、授業の内容や教え方、教員、専門家、学生の交流を広げる必要があると指摘します。新しい技術分野では、国際的な基準に沿った共同のプログラムも発展させるべきだと話しています。
ベトナム宇宙センター。
日本や韓国との協力を見ると、ベトナムの課題は、外から技術の入り口を増やすことだけではありません。大切なのは、研究、試験、人材の育成、企業による受け入れ、改良、そして商品化。この道のりを、すべて通れる仕組みをつくることです。
そのため、協力の成果は、協定の数や、紹介された技術の数だけでは測れません。試験に進んだ研究成果はいくつあるか。技術を受け入れて改良できる企業はいくつあるか。育った人材は何人いるか。そして、研究室から市場に出た製品はいくつあるか。こうした輪がつながったとき、国際協力は、ベトナム自身の発展の力になります。








